タケノコ自由研究
竹林のそばを歩いていて、なんか黒い竹がある、と思ったらそれはタケノコであった。
黒い皮を付けたまま、タケノコが伸びているのだった。
黒い竹の先端を見上げると、しゅっと細くなり、もしゃもしゃしている。上部だけをすぱんと切り取ったらほぼタケノコである。
ただ、長い。1m程度のものや、3mくらいまで伸びたものが、そこにも、あそこにも。
3mを超えてくると、外側の黒い皮がところどころ剥がれ落ちて、鮮やかな緑色の肌が現れはじめている。
タケノコすなわち竹の子は育つと竹になる、というのはもちろん知っていたが、タケノコから竹へと今まさに変貌しつつあるところを見るのは初めてだった。
歩きながら、タケノコのときは中身がみちみちしてるのに、竹になると空洞になるのは、どうしてなのか、という話になる。
あの、紙をくるくる巻いてあって、ぶんと振ると巻きの内側がしゅるるると飛び出て長くなるおもちゃ(あれ何て名前なの?)と同じ原理ではなかろうか。
タケノコの内側には、大人の竹の外皮となるパーツが初めからすべて詰まっていて、それが生長とともにしゅるるると表に出てくるということではないか。
だとしたら節が空洞でなく塞がっているのはどうしてなのか。
それも初めからあるんじゃない?
というわけで帰宅してから調べてみました。
我々の仮説は概ね正しかった。
竹の節の数はタケノコのときから決まっていて、木の年輪のように生長に伴って増えるものではない。
孟宗竹だとだいたい60節くらい。
改めてタケノコの断面図の画像を見てみたら、そうか、そういえばこのひだひだ。これが節なのね。
60もあるようには思えないが、タケノコ時には上下のみちみち部分からまだ分離していないものもあるのかもしれない。
その柔らかなひだの隙間をひとつひとつ拡げるように育つとすれば、節も壁面も最初からあるわけで、大人の竹の外皮となるパーツを初めからすべて持っている、というのも正解だろう。
それから、タケノコは切って植えたら竹になるの? という疑問も出たので、それも調べた。
さすがにそれは根っこがないとだめなのでは? と思っていたが、やはり、根がないと移植や株分けは出来ないよう。
私は多肉植物を育てていて、やつらは適当に切って乾かして植えたら根が出るので、それを見ていた夫は植物ってそういうもんだと思っていたのかもしれない。が、もちろん植物もいろいろなのである。
ちなみにひとつの竹林に生えている竹はみんな地下茎でつながっていて、つまりは竹林にとつが一個の個体らしいです。すごい。
だから一斉に咲いて一斉に枯れるのだね。
そういうことを知ってから見ると、この時季、どこの竹林にもタケノコの長いやつがいる。
今までどうして気づかなかったのか不思議。
もしかして見たことがなかったのは私だけだったのかもと思う。
むしろ前から知っていたのを忘れていただけのような気がしてくる。それはたぶん気のせい。
30数年間生きてきて、当たり前だけどまだ知らないことがたくさんあって、
小さなことをひとつ知るだけで世界はけっこう面白く見える、ということを実感した、2016年のゴールデンウイークでした。