水泉動(ふたたび遅れ)

明日から新しい候に入ってしまう、と昨夜慌てて仕上げようとしたけど仕上がらず、またしても一候遅れです。暦より5日遅れて生きているわたくしですがどうぞよろしく(五七五七七)。

 

というわけで昨日までの七十二候、水泉動、しみずあたたかをふくむ。地中で凍っていた泉が動き出す頃、とのこと。泉とは湧水で、外はまさに寒さのピークではあるが、地中では氷が融けて春に向かって動き始めている…ということらしい…が、まったくぴんとこない。

ここまでいくつかの七十二候を取り上げてきたけど、その中でいちばん、ぴんとこない。地中の泉、というものがまずもって想像できない。地底湖とも違うだろうし。

そもそも湧水とは何か。雨や雪が地面に染み込んで地下水となる、それが地表に湧出したものを湧水という。おかしい、地中から出てきてしまった。ならば地中の泉とは。単純に地下水ということ? 地下水が融けはじめるってこと?

いや、基本に戻ろう。「水泉動」という字面自体には「地中」の要素はない。ただ泉の水が動くだけ。泉とは地下水が地表に湧き出てくるところ。ウィキペディアをはじめ、あちこちに「地中で凍った泉が動き出す」というふうに書かれているけど、本当は「地中で凍った(水が融けて、地表の)泉が動き出す」なのではないか。

地面の下で、凍っていた水が少しずつ温み、地表に湧き出すところを目指してゆっくりと流れはじめる。その水が集まったとき、泉も融けて動き出す。それならイメージできる。もうそれでいこうと思う。

 

イメージできる、とはいえ実は具体的に地下水が地中のどのあたりをどんなふうに流れているのか、というのは相変わらずわからない。地下水自体は漠然とイメージできても、それを実際に自分の足元にあるものとして想像するのは難しい。 

 

いつも散歩している道で、秋頃からずっと、道路の水はけを改善する工事をしている。アスファルトを剥がし、穴を掘り、中で何やらやっているのだが、何をしているのかはわからない。 たまに通りすがりに覗いてみるが、よく見えないしあまり長く覗き込むのも冷やかしみたいで気が引けてしまう。

が、さっき思い切って少し長めに覗いてみた。入り口は畳2枚ぶんほどだが、中はかなり広い。幅は道路の端から端まで、深さは3メートルくらいか。長さは、どこまで続いているのか見えない。まさかこの道路の下ぜんぶ、こんな空洞になっているのだろうか。というかもしかしてこれはこの空洞を長く延ばす工事なのか。

ちらっと見たところで結局全貌はわからないし、地上の雨水がこの空洞のどこをどのように流れてその後どうなるのかもわからない。世界じゅう、見たことのないものはたくさんあって、その中には想像で補えるものもたくさんあるのに、なぜか地面の下のことになると、私にはそれだけで想像するのが難しくなってしまう。

 

これも個人的なことかもしれないけど、「地下+水」というと私はどうしても暗いイメージを描きがちだ。地下というと黄泉の国のような地下他界を想像してしまうので、そこを流れる水も、そこへ向かって流れる水も、どうしたって暗い。

なので今回、春を先導するように温んで動き出す地下水、というものが新たに頭の中に加えられたのは、良かった。地中には暗い水も明るい水もあるのだね。なんだこのまとめ。

 

濁流がグレーチングの下をゆく 呑み込まれたら一瞬で闇

 

透明な氷の粒を抱いたまま春のきざしはまだ土のなか

 


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昨年末に初めて七十二候の話をした記事の中で、虹蔵不見、にじかくれてみえず、これ以降虹は見えなくなるというくだりがあったのだけど、さっきグーグルフォトで画像を見てたら、冬の虹の写真が出てきた。2006年末。見たことない気がするなどと書いたくせに、見てたし写真まで撮ってた。すみません