水沢腹堅(御神渡りの思い出)

水沢腹堅、さわみずこおりつめる。沢の水が厚く凍る頃、つまりものすごく寒い時期ということ。

大寒波、寒かったですね。本当に寒かった。赤子と猫のために一晩じゅう暖房をつけているので、室内にいるとあまり実感がないけど、先日は蛇口の水があまりに冷たくて、これが大寒波…! と思いました。この家に住んで3年、水道水がここまで冷たかったのは初めて。

このあたりでは雪も20cm以上、吹き溜まりになるような場所では30cmくらい積もった。日陰に駐めてある我が家の車は降雪から4日経っても雪に埋もれたままで、一昨日、いいかげん掘り出そうと雪を払ってみると、さらさらさらっと舞い上がって驚いた。ずっと気温が低いから、融けたりまた凍ったりすることなく、パウダースノーのままなのだ。

二十四節気では大寒大寒のど真ん中。大寒って本当に寒いんだなあ、としみじみ思う。

 

沢の水ではないけれど、凍るといえば、諏訪湖御神渡りの兆候というニュースを見た。ご存じの方も多いと思うが、御神渡りとは、諏訪湖が全面結氷した際に氷の表面に亀裂が走り、山脈のようにせり上がる現象。湖を挟んで祀られている諏訪大社上社男神が下社の女神のもとへ通った道すじだと言われている。

寒くないと現れないので、毎年見られるものではなく、現れそうになるたびにニュースになっている。今年もすでに、現れそうで現れませんでした、というニュースを見たが、どうやらまた現れそうらしい。

 

信州に住んでいたころ、ひとりでこれを見た。

当時の日記を見ると、御神渡り的なものを見た、という記述で、それが本当に御神渡りだったのかいまいち確信が持てていなかったのだが、その日付が2008年2月2日。調べたら、この年の御神渡りが1月30日に観測されているというので、私が見たのはちゃんと御神渡りだったらしい。

そもそも当初の目的は、早朝からドライブに出かけ(当時、夜明けのドライブにはまっていた)、犀川白鳥湖というところで白鳥を見ることだった様子。しかし思ったより天気が良くなく不完全燃焼、もう少し経てば晴れてきそうと判断して南下を続け、峠を越え、その途中で見えた諏訪湖が朝日で金色に輝いていたので、湖を見下ろす展望広場のある公園へ向かい、そこで凍えそうになりながら諏訪湖を眺め、せっかくだから近くでも見ていくか、と山を降りて諏訪湖御神渡りを見た、という流れのようだった。

いま書きながら当時の自分のフットワークの軽さにびっくりしている。雪も路面凍結も寒さもものともせず、思いつきをどんどん行動に移せるタフさ自由さ、それが若さというものなのか。慣れか。

 

適当なところに車を停め、湖畔に降りられる場所を探して歩いた。降りたところからちょうど湖面の氷がせり上がっているのが見えた。向こう岸までは届いていないよう。アスファルトの護岸に座って、慎重に、ブーツの踵で氷を蹴ってみる。固くてびくともしない。とはいえさすがに乗るのは怖い。ひとりなので万が一氷が割れたら誰にも助けてもらえない。

氷を眺めながら缶のコーンスープを飲んだ。生まれて初めて、ひと粒残らず上手に飲めた。ものすごく幸せな気持ち。氷に乗れない私の代わりに、空き缶を氷に乗せて記念写真を撮った。浮かれている。

 

という御神渡りの思い出。

 

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白鳥湖。ぐわわーぐわわーとやかましかった

 
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山の上から湖


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御神渡り


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 これも?

 
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湖が凍るくらいに寒いから会いたい人に会いに行きます