黄鴬睍睆(とりとめない鳥の話)

今日まで? 明日までかな? 黄鴬睍睆、うぐいすなく。ウグイスが鳴はじめる頃とのこと。

春告鳥、うぐいす。本州では2月下旬から3月上旬に鳴きはじめることが多いらしいので、この時期に鳴いていたらちょっとせっかちさん。

 

「迷いながらだっていいから歩こうぜ」今年最初の鶯が鳴く

 

という歌をずいぶん前に作った覚えがあって、確認したら2009年3月9日。朝、会社に行こうと玄関のドアを開けた途端、ホー…ホケッキョ、とまだぎこちないウグイスの声が聞こえた。東京の普通の住宅街でこの声は完全に不意打ちだった。理由は忘れたけどなんとなくくさくさしていて、でもその声を聞いたら、なんだよ春かよ、まったくもう、と少し楽しくなってしまった。しょうがない、やるしかないのだ、と思った。

 

ウグイスは春のイメージだけど、夏頃まで鳴いている。むしろ夏のほうが鳴き方が上手い。

ウグイスは秋冬を人里近くで過ごし、早春になるとあのホーホケキョを練習し、それから山に帰って初夏の繁殖期を迎える。あのホーホケキョは巣を守る雄が「ここはわしらの縄張りやで」と宣言する意味で鳴いているのだという。だから山に住んでいた頃は夏によく鳴き声が聞こえていたのだ。ずいぶん遅い時期に鳴くなあと思っていた。

毎年、鳴きはじめた頃のウグイスは鳴き方が下手で、鳴いているうちにだんだん上手になる。秋から冬にはあの鳴き方をしないので、半年もやらないでいると下手になるらしい、というのを読んで、あーわかる、と思う。田舎で車通勤をしていた頃、毎日車内で大声で歌っていたのに、何年かして久しぶりに車内で歌ってみたら全然声が出なくて驚いたのだ。特に高音域。完全に喉が閉じている。これは相当練習しないと取り戻せない。ウグイスと違って取り戻す必要もないのでそのままにしているけど。

 

話は変わるが、いま住んでいるところの近くには水路に沿った緑道があって、そこを散歩していると、立派な望遠レンズ付のカメラを手にしたバードウォッチャーとよく出会う。林と畑あるいは民家に挟まれたこの小道にはさまざまな鳥がやってくる。この1年で出会った鳥を思いつくまま挙げてみると、カラス、ハト、キジバト、スズメ、ハクセキレイムクドリヒヨドリコサギアオサギゴイサギメジロアオジエナガコゲラシジュウカラカワセミカルガモオシドリ、少し先の公園でジョウビタキ、道路を挟んで向かいの薮でコジュケイ。あとはいつも木の中に数羽いるけど近づくとすぐ隠れてしまって姿を見せてくれない謎の鳥(だれ?)。すべて徒歩15分圏内で遭遇したもの。充実している。

このうちいくつかの名前は、散歩中に出会ったバードウォッチャーに教えてもらった。バードウォッチャーは何人かいて、みな中年以降の男性なのだが、私が鳥を見ているところに通りかかったり、何人かで鳥を見て話しているところに私が通りかかったりすると、あれはゴイサギだね、あれはオシドリだよ、とさらりと教えてくれるのでありがたい。もう少し行ったところにカルガモの親子がいたよ、などの情報提供もしてくれる。バードウォッチャーズは鳥を見る人にやさしい。

 

しかしこの緑道で私はウグイスを見たことがない。声も聞いていない。というのはおそらく、去年の2月下旬から3月は出産直後で完全に引きこもっていたためだ。あれだけいろんな鳥が来ていて、いないはずがない。と思う。

今年はもう、がんがん歩く。こっちから迎えにいく勢い。いつ初鳴きが聞けるのか、楽しみにしている。

 

春告鳥なきそめるとき静寂はほどけてひらく小さな扉

 
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足元はまさに早春

 

参考資料:ウグイス|日本の鳥百科|サントリーの愛鳥活動

いつも鳥の名前を調べるのにお世話になっています