玄鳥至(一候遅れ甚だしい)

また間に合わずに次の候になってしまった。

玄鳥至、つばめきたる。ツバメが南から渡ってくる頃、が昨日で終わりました。

何を書こうか、ツバメで検索してあちこちのサイトを読み漁っていたのだけど、ツバメの文字を見すぎてツバメなんだかシバメなんだかわからなくなるばかりで書くことがまったく思いつかないのだった。もう今回はパスしちゃおうかなあとも思った。パス3まではゲームでも許容されるではないか。ん、もしかしてそれって「仏の顔も三度まで」に由来するのか? それより、パス3まで認められてるゲームって具体的に何だったっけ? などとどんどん思考が逸れていく始末。

でも、とにかく七十二候がひとまわりするまでやる、と自分で決めたから、とんでもない不測の事態が起きるまでは、やる。パスしたらその候が自分の中でないものになってしまいそうだし。

 

家の近所に、毎年(私が知る限り毎年)ツバメが巣を作る場所が少なくともふたつある。ひとつはアパートのすぐ隣にある小さな製本会社の玄関先。もうひとつは通りを渡って路地を入った五軒ほど先の家のやはり玄関先。改めて比較してみると、どちらもコンクリートの天井があり、三方を壁に囲まれた空間の、その中でもやや奥まった場所、という共通点がある。カラスなどの敵に襲われにくいという意味ではかなり良い場所であるといえる。

人様の敷地なので巣立つまではあまりじろじろ覗けないが、巣立ってしまえば舞台は道の上になるので見放題だ。だいたい5月下旬から6月頃になると、巣のある場所の近くで数羽のツバメがひよひよと飛んでいたり、並んで電線にとまっている。ひよひよ、そう、飛びはじめはいつも危うくて、ああこの子は今年生まれた子なのだ、というのがよくわかる。それがだんだん上手に飛べるようになるのを、立派になって、としみじみ眺めるのが好きだ。

 

去年の6月、友達が家に遊びにきた日、アパートの目の前の電線にツバメがずらりと並んでとまっていた。7、8羽いたと思う。うちはアパートの二階なので、玄関前に立つと目線とほぼ同じ高さに電線があり、そこにずらりとツバメ。訪ねてきた友達を歓迎しているようだった。

ツバメの生態について調べていて、ツバメは一回の産卵で3〜7個の卵を産む、というのを見て彼らのことを思い出した。あのツバメたちは去年生まれたきょうだいだったのだろうか。隣の会社の軒下で生まれたきょうだい。

しかし、巣立ちまでのツバメの生存率は50%だという。彼らがみなきょうだいだとしたら、生存率100%に迫ることになってしまう。となると近所の家族と混ざっているのか。幼なじみか。それとも、親ツバメは春から夏のあいだに二度産卵するというから、その二回ぶんの若鳥…にしては大きさも同じくらいだったから、それはないな。

巣立ってから秋に南へ飛び去るまでの生存率はさらに下がって13%になるという。大半はカラスや猛禽類に襲われる。

うちの近くには広い雑木林があって、そこには大勢のカラスが棲んでいる。夕方になればみんなそちらに向かって帰っていくし、林の上空で、よく集団対集団で揉めているのも見かける。ツバメのとまっていた電線に来ることももちろんある。

去年、アパートの駐車場に落ちている鳥の死骸を警察が回収しに来たことがあった。日記に残っていないので、正確には覚えていないが、夏だった気がする。地面の痕跡は水で洗い流され、真っ白な羽毛がふわふわと辺りに散らばっていた。あれはもしかしたらツバメだったのかもしれない。

 

9月には玄鳥去、つばめさる、という候がある。今年もきっとあの場所にやってくるから、秋には今年のツバメたちの話ができたらいいなと思う。

 

渡り鳥死ぬまで旅をつづけても生まれた場所はただひとつだけ

 


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そういえば先々週あたりからようやくウグイスが鳴きはじめました。一週間経ったら鳴き方がとても上手になっていた。この大きな木のあたりから何度も何度も聞こえてきたけど姿はまだ見ていません