5月までにつくった歌
みずぎわに舟を浮かべて漕ぎ出せぬままに朝焼け 息を、吸う
おさなごの食事は祭り あつめてもあつめてもなおごはんつぶなり
白い花散りし後には白い蝶みどりのなかを弔うように
たんぽぽの綿毛をわれのくちびるに押しつけ笑う 吹きたまえ、さあ
あたらしい船は銀色 沈むとき魚みたいにきらめくように
世界一かわいい、世界一すきだ、と抱きしめながら思う「ごめんね」
夏ひとつ 柔らかな声で嘘をつく人と過ごした夏ひとつあり
桃の皮うすくナイフで剥くように滴るままに懺悔する夏
歩きたくないけど歩く どくだみは触れるなかれと頑なに白
まぼろしの影絵のような黄アゲハを追えば光に融けゆく世界
宇宙語をあやつる君が水たまりの中で手を振る さよなら五月
直喩にたよる傾向