半夏生(この夏の半分を)

半夏生、はんげしょうず。烏柄杓(カラスビシャク、漢名を半夏)が生える頃、または半夏生というその通りの名をもつ草の葉の裏が白くなる頃、ということだが由来がふたつあるのは半年ちょっと見てきて初めてではなかろうか。

由来ははっきりしないものの、半夏生、という言葉は七十二候を追いかけはじめる前から聞いたことがあったし(そういう方は多いと思う)急に知ってる言葉が出てきた、という感じだった。なんだろうと思ったら、この半夏生というのは七十二候のひとつであると同時に、雑節のひとつでもあるらしい。この場合は「はんげしょう」と読む。雑節というのは、節分、彼岸、八十八夜、土用などといった季節の節目となる日のこと。七十二候のように中国由来のもの(をいじったもの)ではなく、日本の気候や生活に基づくもので、立春夏至春分秋分を起点にして何日め、というふうに定められている。

どちらにも登場するのは半夏生だけ。おそらく、農業的に重要なこの時期にちょうどいい、ということで七十二候から雑節に採用されたのだと思う。

 

雑節でいうところの半夏生は、夏至から11日め〜七夕あたりまでの5日間を指す(ちなみに七夕は雑節には含まれていない)。

半夏生には毒が降るとか、妖怪が出るとか、この日に採った野菜は食べるなとか、蛸を食えとか、各地でさまざまな言い伝えや風習がある。これは七十二候ではなく雑節の半夏生にまつわるものであろう。節分や土用にもそれぞれさまざまな風習があるのと同じで。 

 

植物の話に戻るが、カラスビシャクを半夏というのは、この植物が生えてくる頃(つまり今の時期)が仏教における「半夏」の時期だかららしい。半夏とは、夏にお坊さんが外に出ず籠もって修行する、夏安居(げあんご)という90日の期間の真ん中、45日めのこと。

仏教からきた「半夏」という名が植物につき、その植物が生える頃という名が七十二候に採用され(七十二候は日本版と中国版とで異なるものもあるが、中国版でもここは半夏生)、それが今度は雑節にも転用され、そこでさまざまな民俗が繰り広げられる。なんだか面白い。坊さんが夏籠もりしているど真ん中の日に、仏教と関係ない市井の人々が、毒が降る、蛸を食えとわちゃわちゃしている。

 

半夏生の時期に降る雨を半夏雨といって、大雨になることが多いのだという。今まさに日本のあちこちで大雨が降っている。どうか大きな災害になりませんように。

 

この夏の半分をあなたにあげる 赤い宇宙に散りばめた種

 
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字面がとてもきれいだと思う、半夏生