草露白(この水は)

草露白、くさのつゆしろし。草に露が降りて白く光る頃。

 

お久しぶりです。だんだん秋の気配が濃くなり、気持ちに余裕も出てきたので、復活することにしました。またよろしくお願いいたします。

夏の間は本当にしんどくて、とにかくもう生き延びることだけを目標にしようと思っていた。暑いと体力だけでなく、それ以上に気力を奪われる。つらかった。つらくてもうあまり覚えていない。

それが最近になってようやく朝晩と散歩に出られるようになった。夕方の風は秋の匂いがする。雲も空の色も少し様子が違う。生き延びた。どうやら生き延びたらしかった。

 

とはいえまだまだ暑い。先週のある日の午前中、日差しつよい、日向つらい、と思いながら歩いていて、逃げるように運動場の木陰に入ると、足元の草が濡れていた。たしか昨夜も朝も雨は降っていなかったと思う。ということは朝露? 朝露なんてずいぶん久しぶりに見た気がする。まったく想定していなかったのでサンダルで来てしまった。素足が濡れる。

その時はそれだけだったが、今回の七十二候を見て、あー! と思った。そうか、これも秋なのだ。秋になったから朝露が降りたのだ。

 

朝露は朝晩と日中の気温差が大きいと生じる。真夏日猛暑日になる日でも、朝晩は涼しい日が増えた。だからこそ私も散歩に行けるようになったわけで、朝露も、私の散歩も、同じ条件のもとに発生した事象なのであった。

 

公園で最初に見つけたのはBB弾ほどの小さな小さなどんぐりの卵で、一週間もすると青いながらも帽子をつけたどんぐりの形になり、さらに一週間もすれば、茶色い、紛うことなきどんぐりになった。蝉の声が減り、あちこちに落ちているのを見る。赤とんぼが飛びはじめる。雨のたびにいっせいに繁茂していた雑草がおとなしくなり、代わりに雨の後にはきのこがぽこぽこ生える。黄葉した桜の葉が落ちている。百日紅の花が勢いを失い、彼岸花が咲く。それから朝露。

これが今年見た夏の終わり。

 

朝露に足を濡らしてこの水はゆうべあなたの頬にいた水


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立秋前の百日紅

今年は暑さのせいか百日紅の期間が短かったように思う。9月の初めでもうずいぶん花を落としてしまった。これからまた咲くのだろうか。