ひとりでなにが悪い

「ひとりじゃない!
あなたを想っている人は絶対いるよ!」

東武鉄道の車内広告に書いてある。

初めて見たとき、おお…と思った。
飛び込みが全国一多いとかいう噂は聞いていたが、そんな広告を出すほど、多いのか…。
青色の灯りを取り入れたり、非常ベルを設置したり、啓発活動を行っています、という内容の広告なのだけど、
果たしてこの広告にどれほど効果があるのか。

あなたを想っている人がいなければ飛び込んでいいのか。



大学生のころ、一冊の本に出会った。
枡野浩一『ハッピーロンリーウォーリーソング』。

当時は短歌にはまったく興味がなかったのだが、本屋でたまたま見つけて手にとってみた。
1ページに一首、対向ページは単色の写真、というつくり。
買って帰り、ゆっくり読んだ。はー、と息をつきながら、時間をかけて読んだ。


いちばん好きなのがこの歌だ。

だれからも愛されないということの自由気ままを誇りつつ咲け

そのころの私は、就活はうまくいかないし、彼氏は私の友達を好きになっちゃうし、なりたいものもなく、なにを支えにこの先を生きていったらいいのか途方に暮れていた。

でも、それは自由であるのだと。
そんなふうに胸を張って生きていいのだと。

実際には私には愛してくれる親も親友もいて、だれからも、なんてことは決してないのだと知っていた。
それでも、この歌は私を強くした。
強く生きていけると思った。



私が自分でも短歌を作りはじめるのは、そこから5年ほど経ってから、また別のきっかけを受けてなのだけど、
その間もこの歌だけはお守りのように心で呟いていた。
作るようになって、そういえばあれも短歌であった、と改めて気づくほど、私の中になじんでいた言葉。



ひとりじゃない、と君は言うが、
ひとりであることが、愛されることより劣るなんて誰が決めたんだ。

当たり前にそうやって決めつけることが、悲劇を生むんではないか。


そんなことを、電車に揺られながら思った。


ハッピーロンリーウォーリーソング (角川文庫)

ハッピーロンリーウォーリーソング (角川文庫)

汗かき通勤の友

駅から会社までが遠くて、普通に歩くと20分以上かかる。
そんな私の夏の通勤の必需品は、

1、日焼け止め
2、日傘
3、腹にタオル

です。
 

1は特に言うこともないけど、肌が弱くて塗らないとすぐ湿疹ができるので、顔には必ず塗るようにしている。

2は、紫外線対策ではなく暑さ対策。 
直射日光を浴びて歩くのと、日陰を作りながら歩くのでは、体感温度がまったくちがう。
と、一昨年に日傘を使いはじめてから知った。
考えてみれば日陰のほうが涼しいのは当たり前なのだ。
男性にもぜひ使ってみてほしい。
日傘=紫外線対策のイメージが強くて、男性で日傘さしてるなんて女子かよみたいに思われがちだけど、そのへんをもっと、マスコミあたりにがんばってもらえたらいいと思う。日傘の新しいイメージ作り。


とはいえ歩くと汗をかく。
私は無駄に代謝がよく、真夏に限らず、歩くとすぐ汗をかいてしまうのだ。痩せてるくせに汗っかき。

そこで絶対に外せないのが、3、腹にタオル。


今の会社に入って最初の夏は、毎日、会社に着くとおなかをこわしていた。
私の席はエアコンの真下だ。
大汗をかいて歩いてきたところに、直風で一気に冷やされる。着いてすぐ汗を拭いてもだめ。もう服が濡れているから。
着替えを持参するしかないのか。

と母に相談すると、そんなのおなかにタオル巻いて行ったらいいんだよ、と言う。
私も働いてるときはそうやってたよ、と。

やってみたらこれが大ヒット。

女性にはわかっていただけると思うんですが、ブラ(私はユニクロのブラトップ一択ですが)の下側、ブラトップで言うとゴムのとこ、にはとても汗がたまる。
そこにタオルを挟みます。
会社に着いたらトイレでするんと抜き取って、ついでに汗を拭いて、かばんにしまう。
それだけで、一日の快適さが桁違い

もうこれなしでは夏を乗り切れない。必需品というより命綱だ。
これなしで、みんなどうやって夏の冷えから体を守ってるのか。
実はみんなやってるの?
他の人から聞いたことないんだけど。


着替えるより楽なので、汗が冷えて困る人にはぜひお試しいただきたいです。


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にぎやかし


今日は本当に暑い。
本当出してきたね、夏。



歯医者でワンダー

今日も歯医者に行ってきた。

子供の頃に治療した歯の、金属との境目に虫歯ができてるらしいので、今日はそこの治療。
右上のいちばん奥。
まず金属を削っていきますね、というので、はーい、とのんびりしていたら、口の中で

ひゅるるがぎきぎりごごごぎゃぴぴりりりがごごぎゅるるり

という、予想外のとんでもない音がして、思わず笑ってしまった。
歯を削る音とは比較にならない。
金属。
メタル…!

しかも、上のいちばん奥の歯ということは、すぐそこが耳なのだ。
耳元で(というか耳裏で)金属の切削が行われている。
その全部の音が右耳から入ってくる。
外耳も中耳もすっとばしてダイレクトに内耳に響いてるんではなかろうか、くらいの近さ。重量感。

新鮮だった。

世界にはまだ味わったことのない感覚がある。
これからもこんな新鮮な驚きを、取りこぼさないように感じていきたい。

と、診察台で大きく口を開けながら思った。


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ぜんぜん関係ないけど、このあじさい、妖精みたいでとてもかわいい。


あじさい銀河



今日もお世話になります、マイお題。


あじさいの印象といえば、
おばあちゃんの家に咲いてる花(幼少期)
花のように見える部分は萼なのだと知って、ふーん、と思う(小学生)
紫陽花と表記することを知ってちょっと好きになる(小学生)
でもやっぱり地味だよね、と思う(中学以降)


あじさいを好きになったのは、社会人になって、初めてガクアジサイを知ってからだ。
通勤途中の歩道に植えられているのを見て、え、これ、もしかしてあじさい? と驚いた。
なぜかそれまで一度も出会ったことがなかったのだ、ガクアジサイ
東京のど真ん中に咲くその花は、光を浴びてとても輝いていた。
通勤が楽しみになるくらいに。


ここ数年、街で見かけるあじさいの種類がどかんと増えたように思う。
昔ながらの住宅街の中を通勤しているせいも大きいかもしれない。
みんな、家の前でそれぞれに好きな花を育てている。
本当は片っ端から写真を撮って歩きたいのだけど、人さまの玄関先で写真を撮るのはやっぱりちょっと気が引けてしまうので、我慢。  


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明るい日には上を向き


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雨の日には下を向く(同じ場所です)


あじさいを見ていると、なんとなく、宇宙のことを思う。
小さな花が無数に付いているのが宇宙っぽいのかも。
ひとつひとつがパラボラアンテナみたいに電波を受信しているようにも見えるし。


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光る空 あじさい銀河は波立ってビニール傘でいま空を飛ぶ


ちゃぶ台越しの小さな足

お題「一番古い記憶」

 
マイお題なんてものがあるのね、と眺めていて目に留まったのがこちら。
勝手に書いてしまっていいのかしら、発案者さんにひとことお声がけしたほうがいいのかしら、と不安になりつつ勝手に書かせていただきます。


幼い頃の記憶というのは、子供の頃の写真を見たり、誰かからその頃の話を聞いたりして知っているだけで、実は後付けの記憶なのかも、と自分自身で曖昧なことが多い。
でも、これに関しては自信がある。
なぜなら、その時の自分の感情を覚えているから。


私の一番古い記憶は、弟が餅を背負った日、だ。


私には年子の弟がいる。
その日、家には親戚一同が集まっていた。
みんな弟のほうを見てにこにこしている。弟はみんなの中心にいて、大きな餅を包んだ風呂敷を背負わされている。どうやらこれを背負って歩けということらしい。
なかなか歩けず、さんざんぐずぐずした後、ようやく一歩、二歩と足を前に出す。
みんな大喜びだ。

私だってそのくらいできるのに。
私だったらもっと上手に歩けるのに。
私もやりたい。やって、ほめられたい。
なんで私にやらせてくれないの。
 
なんで、って正解は私も前年に同じことを済ませているからなんだけど、そっちの記憶はまったくないので、ただ、悔しかった。
悔しさと嫉妬の混ざった歯がゆい気持ちで、ちゃぶ台の向こうの弟を見ていた。
それが私の最初の記憶だ。


大人になって調べたら、それは1歳の誕生日に行う一升餅という慣習らしい。
ということは、私はおよそ2歳半。

うちは親がまめに写真を撮っていて、きちんとアルバムにまとめていたのだけど、写真を見ても当時の感情まで思い出せるものは他にない。
そんなに悔しかったんだろうか。


思い返せば、子供の頃の私は悔しがりだった。
怒られて泣くのは、いつも、悔しいからだった。
うまく気持ちが伝えられないことが。

うまく伝えられないのは、自分で自分の感情がよくわからないからだ。
中学生の頃に、ノートに感情を書きつけるようになってから、そう気づいた。
自分がどう思ったのか、どう思うのか、文字にしていくことで、私はようやく自分を知ることができたのだった。
それからは悔しくて泣くことは減ったと思う。


話がそれてしまった。


次の記憶はおそらく、幼稚園に入った最初の日だ。
ロッカーで隣同士になった子のお母さんと母が挨拶しているところ。

幼稚園から先は断片的な記憶が増えていくけど、2歳、3歳の記憶はひとつだけ。

それ以外の、記憶にない無数の出来事は、それでも私の脳のどこかにいたりするのだろうか。
いつか思い出すことがあるのだろうか。
なにかのきっかけで、ぽん、と思い出せたら面白いのにな。

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まっしろな指先で畳をなぞる くやしいことが生きてる証


とっちゃんぼうやに関する考察

とっちゃんぼうや。

とっちゃんぼうやとは、ぼうや感のあるとっちゃん(大人)のことで、とっちゃんのようなぼうやではない。

日本語では、名詞がふたつ重なれば、先の名詞が後の名詞を修飾するのが普通だ。
アイロン台はアイロンをかけるための「台」で、透明人間は透明な「人間」、猫おばさんは猫に餌をやる「おばさん」であって、おばさんな猫ではない。 
ぼうやのような「とっちゃん」を表すなら、ぼっちゃんとうさん、となるのが自然ではないのか、という疑問。


後ろの名詞が前の名詞を修飾する複合語を一生懸命探したけど、なかなか思いつかない。  
唯一浮かんだのが、アンファン・テリブル、恐るべき子供、だけどこれはもともと日本語ではない。 
英語でも複合語だと、前が後ろを修飾するのが一般的だから、フランス語的な発想といえるのか、とっちゃんぼうや。 
とっちゃんぼうやのくせに。 


しかしふと、
絵本のような文脈なら、猫おばさん(エプロンつけてる)=おばさんな「猫」、が成立する
と気づく。 
これはどういうことだろう。


犬のおまわりさんを仮に複合語にしたら、犬巡査。これは犬な巡査であり、巡査な犬である。 
美人警官は美人な警官で、警官をしている美人。
おじいちゃん先生はおじいちゃんな先生で、先生をしているおじいちゃんだ。 

人(犬でも)の“属性がふたつ並んだ複合語”のとき、
主属性(もともとの要素)+副属性(肩書きなど)
の並びになる、と仮定できはしまいか。

美人警官は警官をやめても美人だ。 おじいちゃんは先生をやめてもおじいちゃん。ここでは時間経過は考えないことにする。

絵本の文脈でいう「猫おばさん」ならば、その「おばさん」はもはや職業のようなものだ。おばさん、という役割の猫。
転職すれば猫巡査にも猫先生にもなり得る。
でも猫であることは揺るぎない。絶対的に猫である。 

主属性(替えがきかない)+副属性(社会的な要素) 

この理屈でいけば、とっちゃんぼうやの「とっちゃん」が主属性、「ぼうや」は社会的要素、と考えられる。 
社会的にはぼうやな立ち位置であるとっちゃん。

まさにこれではないか!! 


ということを、二年ほど前にひとりで延々と考えていた。
だれにも共感してもらえなかったのでここに書きます。



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こちら、前々回のエントリの後に撮った、くちなしに蟻がついてる現場。この花にだけ、三匹もいた。

豆のままでお願いします

父はコーヒーが好きで、私が物心ついた時から、日曜の朝は豆をごりごり挽いてコーヒーを淹れていた。
いつからか豆を挽くのは子供の仕事になった。床に座り、大きくて重たい鉄のミルを足の間に挟んで、ごりごりごりごりとハンドルを回す。その感触が好きだった。
私も大人になったら、週末のたびに豆を挽いてコーヒーを淹れるのだと、大人ってそういうものなんだと、当然のように思っていた。


それから二十数年
とっくに大人になっていたが、いっこうにそうなる気配はない。
自動的にそうなるものではないのだ。
始めなければ始まらないのだ。


ということで、二年ほど前に始めることにした。

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私のコーヒー三種の神器
左、カリタのコーヒーミル
中、野田琺瑯のキリン印のコーヒーポット
右、KINTOのドリッパー


ミルは父のおさがりで、まさに子供の頃の私がごりごりしていたそれである。
もう豆を挽くのは面倒らしく、使っていないというので、いただいてきた。
現在は受注生産のみだとか。いいものもらった。

ポットも実家にあったもの。
誰かにもらったんだと思うけど、使ってないから、と母がくれた。 
底にキリンのマークがあって、調べたら野田琺瑯のものだった。いいものもらった。

新たに買ったのはドリッパーのみ。
当時、こんなのが発売されるというのをネットで見て、あらあら、かわいいじゃないの、と思っていたので、店舗で見つけて、あらあら、あのかわいいやつじゃないの、と思ってすぐ買った。


始めてはみたが、週に一度くらいしか淹れないし、数ヶ月使わない時期もあったりして、私の腕はまったく上がらない。

でも最近、会社の最寄り駅近くにできたコーヒー屋さんで豆を買ってみたら、その豆が、なんだかいいのだ。
ミルで挽くときの手応えが全然ちがう。
これまでの豆より、軽い。ごりごりごり、ではなく、かりかりかり、だ。
なにが違うのかわからないけど、なんだ、コーヒーって面白いな、と思った。

面白いのでそれから休みのたびに淹れている。

ちなみに私はミルクたっぷりと砂糖少々を入れて飲むので、コーヒー本来の味はたぶんいまいちわかっていない。


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これもかわいい

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野田琺瑯といえばこちらが一般的


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でもはてな編集アプリだとうまく調整ができなくて、囲みの中にテキストが入っちゃったり、直そうとしたら枠線だけ残って消えなかったりして大変だったー