あのころ作った歌、2008年前半
今月も「短歌の目」に参加させていただこう、と思うのだけど、まったくもって、するりとは出てこない。
かつては毎日のように作っていたのに。
たぶん、今よりも体の中に五七五七七のリズムが自然にあったのだと思う。
ということで、それを取り戻すべく、図書館で歌集を借りてきたり、昔作った歌を読み返したりしています。
前回に続き、2008年前半。
透明な残像に目を奪われて気づけば恋の掌のうえ
ひとひらの真綿ふわりと手のひらに跡形もなく季節の終り
水色の空に木の芽もふるふると誘われるなり無辺の未来
青空に揺れる桜と舞う鳥とあの人が笑う至上の春よ
終りなき旅を行くほど強くなくだから去るのだマイクを置いて
視線交わし光閃くきっとまたひとりよがりかも空が眩しい
明白で確信に満ちて揺るがない運命なるものひとつください
迷いなく湖面は凪いで水底の世界へ降りてゆくならば今
真夜中に悪魔が来たりて手の中のおにぎりを握りつぶせと歌う
夏の夜に蛙の声も鳴り止んで誰の名前を忘れてゆくの
この頃は歌を作ることが本当に楽しかった記憶がある。
恋をして、失恋して、いろいろと行き詰まり、それでも信州の風景は美しい、という日々。